最終更新日: 2026年06月02日
2006年にiPS細胞が登場し、2013年には世界初のiPS細胞を用いた臨床研究が行われるなど、医療界では様々な分野で再生医療の研究開発が進んでいます。ヒトを対象とした治療が実際に行われている中、いよいよ再生医療の実用化の段階が近づいているといえるでしょう。
新たな治療が実用化されるかどうかには、治療にかかる費用が重要な因子となります。いくら優れた治療法でも、患者さんがその費用を負担することができなければ、治療を行うことはできません。患者さんの費用負担を減らす重要な鍵となるのが、保険適用です。
この記事では再生医療と保険適用について紹介します。

そもそも保険適用とは
日本では、国民が等しく医療を受けることができるように、国民皆保険制度といって全ての人が公的医療保険に加入しています。公的医療保険とは、サラリーマンの人などが加入する被用者保険、自営業の人などが加入する国民健康保険、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度があります。
受けた検査や治療が公的医療保険に認められていれば、患者さんの自己負担は1~3割になります。負担割合は年齢や加入している保険の種類、収入などによって異なります。残りの費用は税金などによって賄われているのです。
一方公的医療保険に認められていない医療の場合、自由診療、または自費診療と呼ばれ全ての費用を患者さん自身が負担することになります。自由診療の例としては、美容整形などがあります。
公的医療保険に認められている、認められていない、で患者さんの負担は大きく異なります。この「公的医療保険に認められている」がすなわち「保険適用」です。新たな治療が保険適用となれば、治療にかかる費用の大部分が公的医療保険から支払われるため、多くの患者さんが治療を受けることができるようになるのです。
再生医療は細胞の採取や培養など特殊な技術を必要とするため、多額の費用がかかります。患者さん自身が負担するのは現実的ではありません。しかし保険適用となるには治療の有効性や安全性が証明されなければなりません。現在も多くの再生医療が保険適用を目指し、基礎研究や臨床試験、治験が行われています。
保険適用されている再生医療等製品
再生医療はまだまだ未来のもの、というイメージがあるかもしれませんが、実はすでに保険適用されている再生医療が存在します。保険適用を検討する上での再生医療は「再生医療等製品」と呼ばれ、「再生医療製品分野」と「遺伝子治療分野」に分けられます。
再生医療等製品は現在までに約20種類が保険適用となっています。治療法の確立が難しい希少疾病を対象とした再生医療等製品が優先的に審査され、徐々に範囲が拡大しています。今後も科学的な根拠や治験の結果を考慮して、保険適用が判断されていきます。
これまでiPS細胞を用いた製品で承認されたものはありませんでしたが、2026年3月、厚生労働省より世界で初めてiPS細胞由来の再生医療等製品が承認されました。そしてこの承認を受け、患者さんが公的医療保険を使ってiPS細胞による治療を受けられる仕組みが動き出しました。
ついに始まったiPS細胞治療の保険適用
2026年5月に保険適用となったのは、住友ファーマ株式会社が開発したパーキンソン病治療製品「アムシェプリ」です。これは、他人のiPS細胞から作ったドパミン神経前駆細胞を脳に移植する治療法で、既存の薬物療法で十分な効果が得られない患者さんの運動症状改善が期待されています。
また、同じく2026年3月に国から製品承認を受けた、クオリプス株式会社の重症心不全向け心筋細胞シート「リハート」についても、現在保険適用のための手続きが進んでいます。
リハートは医療機器として審議されるため、アムシェプリより少し遅れて2026年夏頃に保険適用がスタートする見込みです。
高額な治療費と保険適用の重要性
再生医療等製品は、細胞の採取、高度な培養技術、厳格な品質管理を必要とするため、治療費が非常に高額になります。
今回保険適用されたアムシェプリの薬価は患者1人当たり約5,530万円に決定されました。これほど高額になると個人の負担は現実的ではありませんが、保険適用されることで「高額療養費制度」の対象となります。これにより、患者さんが実際に支払う月々の自己負担額は、年齢や所得に応じた一定の上限(一般的な所得層であれば数万〜十数万円程度)に抑えられるため、多くの患者さんがこの革新的な治療を受けられる道が開かれました。
