リプロセルの成長戦略

1.リプロセルのビジネス領域



 iPS細胞は、培養器内で大量に増やすことが可能であり、体の様々な細胞に分化する能力を持っていることから、これまでに無い次世代のライフサイエンス事業を生みだす分野として、大きく注目を集めています。

 リプロセルでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。 短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。

(1)研究支援事業

 世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来より性能の良い新薬が開発できることが期待されています。
 中でもヒトiPS細胞はその中心的技術として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明および新薬開発が加速されると期待されています。

 リプロセルでは、iPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しています。
 さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えています。

 以上のように、ヒトiPS細胞およびヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。


(2)メディカル事業

 近年、再生医療分野においては、ヒト幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用に関連した研究および治験が世界中で盛んにおこなわれており、その成果による医療の発展を、多くの患者が待ち望んでいます。
 特にiPS細胞は、神経や心筋、肝臓、膵臓などの様々な細胞に分化させる事が可能であることから、一刻も早い臨床応用が望まれています。
 iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題としては安全性の確保があり、遺伝子の変異、がん化のリスク等が挙げられています。

 リプロセルでは、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を開発・保有しており、本技術を用いたビジネスを行っています。
 今後は臨床応用をさらに進め、iPS細胞技術を活用した再生医療を推進してまいります。




<世界的に市場の活性化が進むiPS細胞・再生医療事業>

 各国でiPS細胞の研究が進み、再生医療の分野でそのニーズは大きく広がっています。
 経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

<再生医療事業を後押しする、関連法案の施行>

 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が平成26年11月25日に施行されました。
 本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。
 本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。



2.リプロセルのグローバル展開

リプロセルでは、「売上拡大」と「最新技術の導入」を行うため、グローバル展開を重要な成長戦略として位置付けています。

(1)グローバル展開による売上拡大

 医薬品および研究試薬の世界市場規模は、一般に日本の10倍程度と言われており、現在は米国と欧州が最大の市場を形成しています。
 リプロセルは、2014年以来M&Aや海外代理店との販売提携により、海外での売上比率の向上に注力してまいりました。 その結果、現在は日本、米国、欧州にそれぞれ事業所を構え、連結売上高の約6割を海外売上が占めるまでにグローバル化しています。
 今後も引き続きグローバル展開を拡大し、各地域での活動を強化することによって、事業の成長に貢献してまいります。

(2)競争優位性の高い新規技術の開発

 iPS細胞や再生医療製品は世界中で熾烈な研究競争が繰り広げられており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。
 リプロセルでは、日本をはじめ、米国、英国のトップ大学との協力を通して、世界最先端の技術を積極的に取り入れています。 今後も、リプロセル内の技術や世界中の最先端技術を導入し、組み合わせることで、競争優位性の高い新規技術の開発を行い、事業の成長に貢献してまいります。

リプロセルの研究ネットワーク