再生医療は、病気やけがなどの様々な理由でダメージを受けた生体の機能を、体外で培養した細胞等を用いて修復する究極の医療です。従来有効な薬や治療法がなかった疾患に苦しむ患者様に対して、全く新しい治療法を提供する可能性が期待されています。
 リプロセルは、幹細胞のエキスパートとして長年蓄積した技術とグローバルなネットワークを最大限に活用して、再生医療の実現を目指します。

■ リプロセルの再生医療製品

<<パイプラインの状況>>  
   

(1) 再生医療製品Stemchymal®

 
●Stemchymal®
 Stemchymal®(以下、ステムカイマル®)はSteminent Biotherapeutics Inc.(本社:台湾台北市、以下、ステミネント社)が開発した健常者ドナー由来の体性幹細胞(MSC)を用いた再生医療製品です。当社はステミネント社と日本における独占的共同開発および販売に関する契約を締結しています。
 ステミネント社Website:http://www.steminent.com/

●これまでの臨床試験成績
 台湾で実施された第I/IIa相臨床試験において、脊髄小脳失調症3型(SCA3)の患者さんに対するステムカイマル®の静脈投与の安全性が確認され、有効性を示唆するデータが得られています。有効性については、ステムカイマル®の単回投与から12ヵ月間、SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)スコアにより評価し、臨床症状の進行が抑制される傾向がみられました。なお、6例中4例ではステムカイマル®の単回投与後、症状の改善が最長で24週間持続しました。詳しくは下記の参考文献をご参照ください。
 参考文献:Cell Transplantation, Vol. 26, pp. 503-512, 2017. Treatment of Spinocerebellar Ataxia With Mesenchymal Stem Cells A Phase I-IIa Clinical Study.(PMID:28195034)

●開発状況
Fiber Optics

<日本>
 2018年6月、脊髄小脳失調症3型(SCA3)と同6型(SCA6)の日本国内の患者さんを対象とした治験計画届をPMDAに提出し、所定の審査が終了しております。これにより、本臨床試験では、科学的に信頼性の最も高いデータを取れるデザインとして、プラセボ対照・ランダム化・二重盲検・並行群間比較試験(RCT試験)を実施いたします。
 また、2018年12月、厚生労働大臣の承認を得て、ステムカイマル®が希少疾病用再生医療等製品に指定されました。これにより、開発助成金や税制措置、優先審査等の支援措置を国から受けられることとなりました。
 現在、第II相臨床試験の実施に向けて、全国の医療機関と被験者募集の準備を進めています。

<海外>
 ステミネント社では、台湾及び米国でも脊髄小脳変性症を対象とした臨床開発を進めています。
 まず、台湾では、2012年5月から2014年1月にかけて第I/IIa相臨床試験を実施し、ステムカイマル®の単回投与の安全性を確認するとともに、有効性を示唆するデータを取得しました。続いて、2015年9月より、三回投与の安全性と有効性を確認する第II相臨床試験を開始し、予定した全ての患者さんへの投与を完了しました。現在投与後の経過観察期間中です。
 続いて米国では、2018年7月に、第II相臨床試験に関する治験計画届(IND)の食品医薬品局(FDA)による審査が完了しました。ステムカイマル®はFDAより希少疾患向け医薬品等の開発を促進するオーファンドラッグ指定を受けています。



●脊髄小脳変性症について
 脊髄小脳変性症は小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の疾患です。
 国内患者数は約3万人(約4,000人に1人)の希少疾患であり、20歳前後から60歳前後まで幅広い年齢で発病することが知られています。



 

(2) iPS細胞を活用した再生医療製品の研究開発

 
 リプロセルは、中枢神経系疾患に対する新たな治療戦略の取り組みとして、米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同でグリア前駆細胞(iGRP)をiPS細胞から作製し、臨床応用を目指す研究開発に着手しました。原料としてiPS細胞を用いることで、品質の安定したグリア前駆細胞(GRP)を大量に製造することが可能になります。


●Qセラピューティクス社
 Qセラ社はグリア細胞開発のリーディングカンパニーです。同社の第一世代製品である胎児組織由来のグリア前駆細胞Q-Cell®は、非臨床試験で様々な中枢神経疾患に対する有効性を示しており、米国において筋萎縮性側索硬化症(ALS)および横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした治験計画届(IND)のFDAによる審査を完了しています。
 2018年10月、テキサス大学において、TMを対象疾患としたQ-Cell®の治験計画がアナウンスされました。この治験では、重症型のTM患者9人へQ-Cell®を投与し、安全性と有効性を評価する計画です。
https://www.utsouthwestern.edu/newsroom/articles/year-2018/reversing-paralysis.html
 グリア前駆細胞(GRP)は、移植後体内でアストロサイト及びオリゴデンドロサイトに分化します。アストロサイトは神経細胞が正常に機能するための環境を整え、オリゴデンドロサイトは神経細胞の軸索にミエリンを形成し、正常な電気シグナル伝達を助けます。動物試験では、GRPの投与を受けた疾患モデルマウスの生存日数が延長され、ミエリン形成が観察されました。




左図:疾患モデルマウス(Shiverer :黒線)と比較してヒトグリア前駆細胞を投与した疾患モデルマウス(Shiverer + hGRP :赤線)の生存日数が延長している。





参考文献:Experimental Neurology, Vol. 291, pp. 74-86, 2017. Transplanted human glial-restricted progenitors can rescue the survival of dysmyelinated mice independent of the production of mature, compact myelin. (PMID:28163160)

●MAGiQセラピューティクス社
 リプロセルはQセラ社と合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MAGiQ社)を設立し、リプロセル・Qセラ社・MAGiQ社の三社間で技術ライセンス契約を締結しています。
 MAGiQ社はQセラ社よりGRP細胞の技術を導入し、リプロセルと共同でiGRPの製造技術を開発しています。 MAGiQ社は今後、iGRPの前臨床試験の実施、および、その後の臨床開発を行い、中枢神経領域の様々な疾患を対象とした再生医療製品として、製薬企業等へのライセンスアウトを目指します。リプロセルは、iGRPを独占的に製造する権利を有しています。

  MAGiQ社及びリプロセルによるiGRPの開発では、 Qセラ社の共同創設者、Chief Strategy OfficerであるMahendra Rao博士がサイエンティフィックアドバイザーを務めています。同博士はアメリカ国立衛生研究所(NIH) 再生医療センターの元ディレクターであり、神経幹細胞の世界的権威です。
●筋萎縮性側索硬化症(ALS)について
 体を動かすための神経系(運動神経;Motor neuron)が変性してしまう病気です。これにより脳から「筋肉を動かせ」といった命令が伝わらなくなり、筋肉がやせていきます。運動神経のみが変性するため、意識や五感は正常であり、知能の低下もありません。
 病状の進行が極めて速い一方で、有効な治療法は確立されていません。日本では指定難病とされています。患者数は、日本国内で約1万人、米国では約3万人と推定されています。

●横断性脊髄炎(TM)について
 脊髄の一部分が横方向にわたって炎症を起こすことによって発生する神経障害です。米国では患者数が約3万人と推定されています。
 通常、腰部の痛みや筋肉衰弱やつま先や脚の異常な感覚などの症状が突然発症することで始まり、その後急速に、麻痺や閉尿や排便制御の喪失などの深刻な症状がみられます。
 一部の患者は障害を残さずに完治しますが、中には日常生活に支障をきたすほどの障害が残ってしまう患者もいます。
 原因は特定されておらず、効果的な治療法は確立されていません。
横断性脊髄炎