パイプラインの状況  
 

(1) 脊髄小脳変性症・幹細胞製品ステムカイマル

 ステムカイマル®はSteminent Biotherapeutics Inc.(本社:台湾台北市、以下、ステミネント社)が開発した健常者ドナー由来の体性幹細胞(MSC)を用いた、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品です。
 日本では現在第II相臨床試験を開始し、被験者への投与を順次開始しています。海外ではステミネント社が主導し、台湾において第II相臨床試験を実施中、アメリカにおいては第II相臨床試験の準備を進めています。


  これまでの臨床試験成績

 台湾で実施された第I/IIa相臨床試験において、脊髄小脳失調症3型(SCA3)の患者さんに対するステムカイマル®の静脈投与の安全性が確認され、有効性を示唆するデータが得られています。有効性については、ステムカイマル®の単回投与から12ヵ月間、SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)スコアにより評価し、臨床症状の進行が抑制される傾向がみられました。なお、6例中4例ではステムカイマル®の単回投与後、症状の改善が最長で24週間持続しました。詳しくは下記の参考文献をご参照ください。
 参考文献:Cell Transplantation, Vol. 26, pp. 503-512, 2017. Treatment of Spinocerebellar Ataxia With Mesenchymal Stem Cells A Phase I-IIa Clinical Study.(PMID:28195034)



  開発状況

●日本
第II相臨床試験のIND承認
 2018年6月、脊髄小脳失調症3型(SCA3)と同6型(SCA6)の日本国内の患者さんを対象とした治験計画届(IND)をPMDAに提出し、所定の審査が終了しております。これにより、本臨床試験では、科学的に信頼性の最も高いデータを取れるデザインとして、プラセボ対照・ランダム化・二重盲検・並行群間比較試験(RCT試験)を実施いたします。
オーファンドラッグに指定※1
 2018年12月、厚生労働大臣の承認を得て、ステムカイマル®が希少疾病用再生医療等製品に指定されました。これにより、開発助成金や税制措置、優先審査等の支援措置を国から受けられることとなりました。
 2020年2月より、第II相臨床試験における被験者への投与を順次開始しています。

※本臨床試験のお問い合わせ窓口について
治験に参加するためにはさまざまな条件があります。
治験に興味をお持ちの方は、まずはかかりつけの主治医にご相談いただき、大学や病院への本臨床試験に関するお問い合わせはお控えください。

まだ各医療機関の問い合わせ体制が整っておりませんので、かかりつけの主治医にご相談後、別途本臨床試験に関するお問い合わせがございましたら、弊社問合せフォームにてお願いいたします。

●海外
台湾、第II相臨床試験の全被験者への投与完了
 ステミネント社では、台湾及び米国でも脊髄小脳変性症を対象とした臨床開発を進めています。
 まず、台湾では、2012年5月から2014年1月にかけて第I/IIa相臨床試験を実施し、ステムカイマル®の単回投与の安全性を確認するとともに、有効性を示唆するデータを取得しました。続いて、2015年9月より、三回投与の安全性と有効性を確認する第II相臨床試験を開始し、予定した全ての患者さんへの投与を完了しました。現在投与後の経過観察期間中です。
米国、第II相臨床試験のIND承認およびオーファンドラッグ指定
 米国では、2018年7月に、第II相臨床試験に関する治験計画届(IND)の食品医薬品局(FDA)による審査が完了しました。ステムカイマル®はFDAより希少疾患向け医薬品等の開発を促進するオーファンドラッグ指定を受けています。


◆ステムカイマル®の開発状況



  脊髄小脳変性症について

 脊髄小脳変性症は小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により徐々に歩行障害(ふらつく、まっすぐ歩けない)や嚥下障害(うまく食べ物が飲み込めない)、言語障害(ろれつが回らない)などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の疾患です。
 国内患者数は約3万人(約4,000人に1人)の希少疾患であり、20歳前後から60歳前後まで幅広い年齢で発病することが知られています。



  ステミネント社

 ステミネント社は第II相臨床試験中の幹細胞製品を開発および製造するバイオテクノロジー企業です。本社は台湾の台北市に位置し、米国と中国にも支社を構えています。ステミネント社が有する独自技術プラットフォームにより製造されるステムカイマル®の製造管理および品質管理はPIC/S GMP等の関連ガイドラインに準拠しています。当社はステミネント社と日本における独占的共同開発および販売に関する契約を締結しています。

http://www.steminent.com/

※1 オーファンドラッグとは、希少疾病用医薬品とも呼ばれ、医薬品医療機器法第77条の2に基づき、対象患者数が本邦において5万人未満であること、医療上特にその必要性が高いもの、対象疾病に対し当該医薬品を用いる根拠があり開発計画が妥当であること、などの条件に合致するものとして、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定するものです。




(2) ALS/横断性脊髄炎・iPS神経グリア細胞

 リプロセルは、中枢神経系疾患に対する新たな治療戦略の取り組みとして、米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同でiPS細胞からグリア前駆細胞(iGRP)を作製し、臨床応用を目指す研究開発に着手しました。
 これまで、Qセラ社の第一世代製品である胎児組織由来のグリア前駆細胞Q-Cell®は、非臨床試験で様々な中枢神経疾患に対する有効性を示しており、米国において筋萎縮性側索硬化症(ALS)および横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした治験計画届(IND)のFDAによる審査を完了しています。しかしながら、原料細胞として胎児組織を使用していることから、グリア前駆細胞の安定供給と倫理上の課題がありました。
 ヒトのiPS細胞は、2007年に京都大学の山中伸弥教授によって、初めて樹立されました。 iPS細胞は、培養器内で大量に増やすことが可能であり、心筋、神経、肝臓、血液など様々な細胞に分化する能力を持っています。また、ドナーの細胞から人工的に作製するため、免疫拒絶や倫理上の問題をクリアできます。新薬候補物質の探索や薬効評価ツールとしての利用だけではなく、再生医療への応用に大きな期待が寄せられています。

 リプロセルは、長年、RNAを用いたリプログラミング技術の開発を行ってきました(当初はStemgent社が実施、2014年同社を買収)。RNA法では、リプログラミング因子であるRNAが核内のゲノムに組み込まれないため、予期せぬゲノム変異や腫瘍形成のリスクが低いという優位性があり、臨床応用に最適の技術と言えます(詳細な説明はこちらのページを御覧ください)。
 原料細胞を胎児組織からiPS細胞に置き換えることより、原料供給や倫理上の問題をクリアし、安定的に大量のグリア前駆細胞(iGRP)を製造することが可能になります。




   開発状況

 2018年10月、テキサス大学において、TMを対象疾患とした胎児組織由来のQ-Cell®の治験計画がアナウンスされました。この治験では、重症型のTM患者9人へQ-Cell®を投与し、安全性と有効性を評価する計画です。
https://www.utsouthwestern.edu/newsroom/articles/year-2018/reversing-paralysis.html
 グリア前駆細胞(GRP)は、移植後体内でアストロサイト及びオリゴデンドロサイトに分化します。アストロサイトは神経細胞が正常に機能するための環境を整え、オリゴデンドロサイトは神経細胞の軸索にミエリンを形成し、正常な電気シグナル伝達を助けます。動物試験では、GRPの投与を受けた疾患モデルマウスの生存日数が延長され、ミエリン形成が観察されました。

左図:疾患モデルマウス(Shiverer :黒線)と比較してヒトグリア前駆細胞を投与した疾患モデルマウス(Shiverer + hGRP :赤線)の生存日数が延長している。

参考文献:Experimental Neurology, Vol. 291, pp. 74-86, 2017. Transplanted human glial-restricted progenitors can rescue the survival of dysmyelinated mice independent of the production of mature, compact myelin. (PMID:28163160)

 リプロセルでは現在、iPS細胞由来グリア前駆細胞(iGRP)への前臨床試験へと向けて、プロセス開発を進めています。


   適応疾患

 Q-Cell®の非臨床試験の結果から、GRPは以下の様々な中枢神経系疾患への有効性が期待されます。
脱髄性疾患:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、横断性脊髄炎(TM)、脳性麻痺(CP)、脳梗塞(Stroke)、多発性硬化症(MS)
神経変性疾患:ハンチントン病、脊髄損傷(SCI)、外傷性脳損傷(TBI)、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)
 リプロセルは、希少疾患(ALS・横断性脊髄炎)をターゲットとした開発へ優先的に着手し、その後ターゲットとなる疾患を広めていきます。

◆GRPターゲット疾患の米国における統計データ



   筋萎縮性側索硬化症(ALS)について

 体を動かすための神経系(運動神経;Motor neuron)が変性してしまう病気です。これにより脳から「筋肉を動かせ」といった命令が伝わらなくなり、筋肉がやせていきます。運動神経のみが変性するため、意識や五感は正常であり、知能の低下もありません。
 病状の進行が極めて速く、⽇本では指定難病とされています。患者数は、日本国内で約1万人、米国では約3万人と推定されています。



   横断性脊髄炎(TM)について

横断性脊髄炎 脊髄の一部分が横方向にわたって炎症を起こすことによって発生する神経障害です。米国では患者数が約3万人と推定されています。
 通常、腰部の痛みや筋肉衰弱やつま先や脚の異常な感覚などの症状が突然発症することで始まり、その後急速に、麻痺や閉尿や排便制御の喪失などの深刻な症状がみられます。
 一部の患者さんは障害を残さずに完治しますが、中には日常生活に支障をきたすほどの障害が残ってしまう患者さんもいます。








   MAGiQセラピューティクス社

 リプロセルはQセラ社と合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MAGiQ社)を設立し、リプロセル・Qセラ社・MAGiQ社の三社間で技術ライセンス契約を締結しています。
 MAGiQ社とリプロセルは、Qセラ社のGRP細胞開発に関する技術・ノウハウと、リプロセルのiPS細胞に関する技術を融合して、iGRPの研究開発に取り組んでいます。

  MAGiQ社及びリプロセルによるiGRPの開発では、 Qセラ社の共同創設者、Chief Strategy OfficerであるMahendra Rao博士がサイエンティフィックアドバイザーを務めています。同博士はアメリカ国立衛生研究所(NIH) 再生医療センターの元ディレクターであり、神経幹細胞の分野で世界的に著名な研究者です。


   Qセラピューティクス社

 Qセラ社(米国ユタ州、ソルトレイクシティ)は中枢神経系疾患および損傷を治療するための幹細胞製品の開発を行っている企業です。

https://www.qthera.com/



(3) RNA法を用いた臨床用iPS細胞の作製サービス

 安全性が高いRNAリプログラミング法による臨床用iPS細胞を受託サービスとして提供いたします。商業利用可能なインフォームドコンセントを取得しており、製造販売承認後の製造にもご使用いただけます。また、日本だけでなく、各国の規制にも対応いたします。

 Point 1  国内外の規制に対応したiPS細胞を使ってグローバルに展開



 リプロセルは、日本、アメリカ、イギリスに研究開発拠点を有しており、豊富な経験を有する専門家が在籍しております。お客様が将来ビジネスを想定されている地域の規制に準じた臨床用iPS細胞をオーダーメイドで作製いたします(例えば、日本のみ、日本とアメリカ両方など)。
 また、組織採取から、iPS細胞樹立、マスターセルバンクの構築まで、自社内で一貫して行うため、インフォームドコンセント、原材料の生物由来原料基準適合性など、全ての必要書類を一元管理しております。このため、将来、お客様が薬事申請を行う際、スムーズに手続きを行えます。


 Point 2  商業利用可能であり製造販売承認後の製造にも使用可能

 臨床応用および商業利用可能なインフォームドコンセントを取得し、組織採取を行っております。 このため、本組織を用いて作製したiPS細胞は、研究および臨床試験だけでなく、製造販売承認取得後の再生医療製品の製造にも使用できます。一貫して、同一のiPS細胞の株を使用することで、株間差の問題がなくなり、開発途中で分化誘導を変更するなどの技術的トラブルを回避できます。
 マスターセルバンクを変更した場合、再生医療製品の同一性が担保できず、非臨床試験・臨床試験の追加実施が求められる可能性もあるため、開発初期から、商業利用可能な臨床用iPS細胞株を使用することをお勧めしております。



 Point 3  RNAリプログラミングによる安全性の高いiPS細胞

 リプロセルは、長年、RNAを用いたリプログラミング技術の開発を行ってきました(当初はStemgent社が実施、2014年同社を買収)。RNA法では、リプログラミング因子であるRNAが核内のゲノムに組み込まれないため、予期せぬゲノム変異や腫瘍形成のリスクが低いという優位性があり、臨床応用に最適の技術と言えます(詳細な説明はこちらのページを御覧ください)。

 当社では、RNA法を用いて、大学や製薬企業等を中心に、研究用iPS細胞の提供を行ってまいりました。これまでの技術や経験を活かし、「臨床用iPS細胞」のサービスを開始いたします。再生医療におけるiPS細胞の課題は、造腫瘍性や核型異常等の安全性の担保と言われていますが、当社のiPS細胞を用いることで、安全性のリスクを最小化することができます。




 Point 4  現状のプロトコルに最適なiPS細胞を選択

 組織採取からiPS細胞樹立、マスターセルバンク構築まで一貫してリプロセルが行うため、お客様の個々のご要望に応じたiPS細胞をデザインできます。ドナー条件の指定(性別、人種、年齢等)にはじまり、培地試薬の選定、遺伝子解析や特性解析試験項目の選択、納品するバイアル数量等まで、幅広く対応いたします。
 iPS細胞の株が変わったり、同一株であっても培地が変わると、その後の分化誘導条件が変わってしまい、再開発が必要になる場合があります。このため、本サービスでは、お客様のご要望に合わせたオーダーメイドのiPS細胞のシードストックを複数作製し、お客様の分化誘導条件に最適なiPS細胞株をお客様ご自身で選んでいただけます。その後、そのシードストックを用いて、マスターセルバンクを構築いたします。



 Point 5  非臨床試験・臨床試験・製造の全行程で同一のiPS細胞株を使用

 臨床試験を行う段階になり、従来の株とは異なる臨床用iPS細胞を導入する場合、分化効率や増殖率等に大きな差があり、プロトコルを一から見直さないといけないリスクがあります。この場合、大幅に研究開発が遅延し、余分なコストもかかります。
 リプロセルは、このリスクを最小化するため、お客様のプロトコル開発の初期段階から、臨床用iPS細胞の導入をお勧めしております。これにより、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認後の製造に至るまで、同一のiPS細胞株をお使いいただけるため、株間差による技術的トラブルを回避できます。
 臨床用iPS細胞の導入のタイミングについては、お客様の開発ステージに応じて個別に対応いたしますのでお問い合わせください。