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ヒト生体試料(血清・凍結組織・FFPE・DNA・RNA)
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バイオバンクの紹介動画
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■ リプロセルバイオバンク・生体試料の特長
幅広い生体試料を提供しています
ご要望に応じて、前向きに採取することも可能です
全てのサンプルでインフォームドコンセントを取得しています
倫理審査関連の書類を提供いたします
※新型コロナウイルス患者の生体試料も提供いたします。
(1) ヒト生体試料の利用とバイオバンク
創薬研究において、これまでの動物実験を中心とした薬効薬理の評価だけでは種差等の問題から限界があることが強く感じられており、画期的な新薬開発のために、凍結組織、血液、血清、尿、DNAといったヒト生体試料の重要性が高まっている。さらに、近年では個別化医療にも注目が集まっており、付随データの充実した生体試料が様々な場面で求められている。これらの創薬研究や個別化医療において生体試料は、標的分子の探索、候補化合物の評価、各種バイオマーカーの発見や、それらを利用した患者のリクルート等に使用されている。その他にも、化粧品関連の研究においては、実験動物の使用が厳しく制限されており、良質なヒト由来の生体試料を入手することが課題となっている。さらに、iPS細胞の分野においても生体試料の重要性が高まってきている。患者由来の体細胞から樹立されたiPS細胞を利用して疾患モデル細胞を作製し、対象疾患の機構解明から、創薬スクリーニングに採用されている。近年は尿といった侵襲性が非常に低い生体試料からのiPS細胞の樹立方法が確立されてきており、幅広いドナーからのiPS細胞樹立が可能になってきている。
日本においては、このような生体試料を保有する機関として、大学病院や公的な研究機関を中心にいくつかのバイオバンクが設置されてきている。しかしながら、これらのバイオバンクでは、提供先との共同研究の必要性や生体試料自体の持ち出しの可否、手続きに時間が掛かる等の課題が指摘されている。そのため、生体試料を必要する企業を含めた多くの研究者は、海外のバイオバンクから必要に応じて生体試料を入手している。海外のバイオバンクでは、適切な手続きを介して取得した生体試料を保有しており、購入者はそれらの生体試料を自由に研究開発に使用することができる。例えば解析のために、購入した生体試料を外部機関に提出することも可能である。このような海外バンクを有効に活用していくことで、創薬研究を始め、各種の開発を加速度的に進めていくことが期待できる。
(2) リプロセルグループのバイオバンク
生体試料の提供様式には、1)バイオバンクに保有されている試料の提供と2)要望に応じたカスタムコレクションでの提供の2通りの方法がある。
・バイオバンクからの提供
リプロセル(旧Bioserve)は、世界有数のバイオバンクを有しており、4大陸に渡り12万人のドナーから採取された60万個以上の生体試料が保管されている。本バイオバンクは、1989年に設立され、多くの製薬企業やアカデミアの研究機関に、生体試料を提供し続けているだけでなく、保有されていない試料についても、独自のネットワークを通じて多様なサンプルを提供することが可能である。
提供可能な生体試料の例
疾患 | 凍結組織 | FFPE | 全血 | 血清 | 血漿 | DNA | RNA |
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脳腫瘍 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
乳がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
乳がん(トリプルネガティブ) | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
子宮頸がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
大腸がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ||
頭頸部がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
肺がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ||
その他の消化器系がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
子宮がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
前立腺がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
腎がん | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ||
白血病 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
リンパ腫 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ||
多発性骨髄腫 | ✔ | ✔ | |||||
関節炎 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
全身性エリテマトーデス | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
乾癬 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
関節リウマチ | ✔ | ✔ | |||||
喘息 | ✔ | ✔ | |||||
循環器疾患 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
市中肺炎 | ✔ | ✔ | |||||
認知症 | ✔ | ✔ | |||||
糖尿病 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ||
炎症性腸疾患 IBD, Inflammatory Bowel Disease |
✔ | ||||||
深部静脈血栓症 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
末期腎疾患 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
肝障害 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
多発性硬化症 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |||
骨粗鬆症 | ✔ | ✔ | |||||
敗血症 | ✔ | ||||||
健常者 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
・カスタムコレクションでの提供
既にバンクに保管されている生体試料を提供するだけでなく、要望に応じた生体試料の採取・提供も可能である。要望に応じたカスタムコレクションにおいては、ドナーの条件から生体試料の採取方法まで、ご指定いただくことで、必要な生体試料を必要な状態で提供できる。生体試料扱うにあたっては、HIPAA(the Health Insurance Portability and Accountability Act)のコンプライアンスを遵守しており、全ての生体試料はIRBの承認を受けた計画書に基づき、適切なインフォームドコンセントを取得して採取されている。
生体試料を取得する際は、問診票により、標準的な臨床診断情報、服薬歴、生活習慣、家族の疾患情報等の付随するドナー情報を取得していることから、非常に付加価値の高い資料となっている。このような自社のバイオバンクと独自のネットワークを活用して、ALS(Amyotrophic lateral sclerosis)や嚢胞性線維症、アクロメガリーといった希少疾患患者由来の生体試料の提供にも注力している。
生体試料に付随するドナー情報の例(※サンプルの種類によります)
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基礎情報
- 年齢・性別・人種・身長・体重・出生地・人種(家族を含む)・使用言語、等 臨床情報
- 治療歴・罹患歴(一部家族を含む)・服薬歴、合併症・副作用・診断方法 診断時期、等 疾患特異的情報
- がんのステージ、再発の有無・血中グルコース濃度・HbA1c濃度・%FEV1、透析の頻度、等 生活習慣
- 喫煙・アルコール・運動頻度・食習慣、等
(3)使用される生体試料
・凍結組織/ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE, Formalin Fixed Paraffin Embedded)
凍結組織およびFFPEは、主に手術時に得られる余剰の組織から作製される。どちらも、がん患者由来のサンプルが多く、FFPEにおいては、病変部位とそれに隣接する正常組織から得られた12,000以上のサンプルを有している。リプロセルグループでは、乳がん、大腸がん、肺がん、子宮がんなどのサンプルを豊富に保有しており、その他のがん種においても複数種類のがん由来のサンプルを有しているので、がんタイプ別の創薬や診断薬開発に使用されている。
・血液/血清/血漿
血液、血清、血漿は各種のバイオマーカー探索を目的として、広範な分野で使用されている。血清と血漿は、目的により使い分けられており、適切な試料を用いることが必要である。バイオバンクには、患者由来の血清だけでなく、健常人から採取された血清も多く保管しており、これらの試料は、バイオマーカー研究向けのFDA/NCIのガイドラインの承認を受けたプロトコールに従って採取されている。詳細なドナー情報が付随しているので、ドナー情報と関連付けたバイオマーカーの探索が可能である。
・DNA/RNA
がんを含む幅広い疾患の患者からDNA/RNAを取得している。これらのサンプルは、SNP解析や候補遺伝子の探索に用いられる。多くの疾患でSNPとの関連が報告されてきており、SNPの相違による薬物反応性の違いも知られている。がん患者のRNAにおいては、腫瘍部位由来のRNAに加えて、隣接する正常部位由来のRNAも提供可能であり、付随する患者情報とともに、がん研究において有効に活用されている。
(4) Fox Chase Cancer Centerとの提携
リプロセルは、米国の主要ながん研究・治療センターの一つであるFox Chase Cancer Centerとがん研究分野のトランスレーショナルリサーチにおいて戦略的提携を結んだ。Fox Chase Cancer Centerでは、ほぼすべての主要な固形腫瘍を採取することができ、それらの試料には、診断前から治療を経たフォローアップまで、治療プロトコールを含めた多くのデータが付随している。この提携を通じて、Fox Chase Cancer Centerが有する生体試料を多くの研究者に提供することが可能となった。さらに、インドでの生体試料の採取・提供の施設の設立を進めており、従来はアクセスが容易ではなかったインドでの生体試料を豊富な臨床情報を付随した高品質な状態で提供することが期待されている。これらの提携活動によって得られた生体試料を利用することで、がん研究を加速度的に発展させることができる。
*Fox Chase Cancer Centerは、1904年に米国発のがん病院の一つとしてフィラデルフィアに設立され、1974年に国立がん研究所総合センターとして認定された。現在はテンプル大学医療システムのメンバーであり、アメリカでの主要ながん研究・治療センターの一つである。所属する研究者は、2度のノーベル賞受賞を含めて、多くの賞を受賞している。米国内で、有力な基礎的、トランスレーショナルリサーチおよび臨床研究を幅広く行っている。
(5)提供サンプル使用実績
- Asai N, Nakamura A, Sakanashi D, et al. Comparative study of SmartAmp assay and reverse transcription-polymerase chain reaction by saliva specimen for the diagnosing COVID-19. J Infect Chemother. 2022;28(1):120-123. doi:10.1016/j.jiac.2021.09.011
- Pyke RM, Mellacheruvu D, Dea S, et al. A machine learning algorithm with subclonal sensitivity reveals widespread pan-cancer human leukocyte antigen loss of heterozygosity. Nat Commun. 2022;13(1):1925. Published 2022 Apr 12. doi:10.1038/s41467-022-29203-w
- Gupta A, Sagar G, Siddiqui Z, et al. A non-invasive method for concurrent detection of early-stage women-specific cancers. Sci Rep. 2022;12(1):2301. Published 2022 Feb 10. doi:10.1038/s41598-022-06274-9
- Shimizu J, Sasaki T, Yamanaka A, et al. The potential of COVID-19 patients’ sera to cause antibody-dependent enhancement of infection and IL-6 production. Sci Rep. 2021;11(1):23713. Published 2021 Dec 9. doi:10.1038/s41598-021-03273-0