今回は、経済情報ウェブメディア「ZUU online」において掲載されております、当社社長の横山のインタビュー記事をご紹介します。
前編に続き、後編をお届けいたします。
まだ前編を読まれてない方はこちらから。
「一次情報」をもとに「自分の頭で考える」
―御社ではPCR検査のサービスもされています。ここに着手された背景についても伺えますでしょうか?
我々はiPS細胞の会社として知られてはいますが、実は臨床検査の事業も15年ほど行っております。各病院から血液をお預かりして、免疫拒絶の兆候があるかないかを調べて返却するようなビジネスです。情報セキュリティ取扱の国際規格を持ち、登録衛生検査所として15年間の管理実績もあります。
ですからPCR検査を始めることは、我々にとってハードルは高くありませんでした。これだけコロナが広がってきていたので、社会貢献の面とビジネス機会の両面を見て、参入する判断をしました。
―反響はいかがでしたか。
おかげさまでいろいろなお客様に好評いただいています。特に我々は精度の高さが強みで、陽性の場合、インド株(デルタ株)やイギリス株といった変異株まで特定できます。そこまで含めて非常に高精度の検査を提供しているということで、リピートされる方も多いです。
―次に、日々のインプット方法というところで、よく読まれる本や雑誌などがありましたらお聞かせください。
昔は経営学をはじめいろいろな本を読んでいました。ドラッカーはもちろん、人事系、マーケティング、経営管理、営業など様々で、一番好きな本は『ビジョナリーカンパニー2』です。「派手にいろいろなことをぶち上げるのではなく、一旦決めたことを地道に徹底的にやり遂げる」という内容に感銘を受けて、私の経営フィロソフィーとしています。
日常的には、たとえばPCR検査の需要が今後どうなるのか、といったニュースはチェックしています。ただ、単に流れてくるニュースを見ているだけでは不十分です。私はなるべく海外のニュースサイトに見に行ったり、データベースの原本をあたりに行ったりします。報道されたことを鵜呑みにせず、データを見て自分で考えることを重視しています。
「パーソナルiPS」で再生医療を広く普及する
―重要な姿勢ですね。ありがとうございます。今注目していらっしゃる分野や業界についてもお聞きしたいと思います。
新規事業とも関連するのですが、我々は今後、BtoCも手がけたいなと思っています。今までの研究支援ビジネスでは、大学や製薬メーカーの研究所にいる研究者相手のビジネスをしてきました。今行っている再生医療ビジネスのお客様も、広く一般の方というよりは、難病に苦しむ方、再生医療でしか治せない特殊な病気の方など、限定された方々です。ですが我々は今後、もう少し幅広く「ライフサイエンスビジネス」を展開していきたいと思っています。
―具体的にはどのような取り組みをされるのでしょうか。
個人のiPS細胞を作る「パーソナルiPS」というサービスを始めました。今現場の治療で行われているのは、他人のiPS細胞を重篤な病状の患者さんに移植するという治療です。ですが他人の細胞を使っている限り、どうしても免疫拒絶の問題が出てきます。免疫拒絶が出ると、現状ではほぼ一生涯、免疫抑制剤を飲み続けるような生活になります。
一方で、自分の細胞を使って自分を治療することができれば、免疫拒絶が基本的には起こりません。これが究極の再生医療です。そして、それができるのは実はiPS細胞しかないのです。iPS細胞は1回作れば半永久的に保存できますから、若いときに作っておき、年を取って再生医療が必要になったときに、自分の細胞を使って治療する。これが「パーソナルiPS」のコンセプトです。
すでに行われている取り組みで、赤ちゃんが生まれたときの臍帯血を保管しておいて、その赤ちゃんが将来何か病気になったときに自分の細胞として使う「臍帯血バンク」というものがあります。パーソナルiPSはそれと似たようなビジネスですが、臍帯血より遥かに広い医療用途があります。これをBtoCとして一般の方々に普及していこうというのが、今注目している分野です。
―パーソナルiPS、とても興味深いお話ですね。最後に、今の思い描いている未来についてお聞かせいただければと思います。
1つは今お話ししたように再生医療の分野で、パーソナルiPSを含めてBtoCまで広めていくこと。もう1つが、「テーラーメイド医療」というものです。たとえば同じがんにかかった人でも、同じ抗がん剤が効くか効かないかは個人によって違うものです。
そこで、がん細胞の遺伝子を採取して解析し、その遺伝子に対して最適な薬を提案するという診断サービスを、インドで先んじて始めています。これをいずれグローバル展開していきたいですし、より個人1人ひとりが、いろいろな医療を選べる世の中にしていきたいと思います。