株式会社リプロセルは、2003年に京都大学・東京大学発のバイオベンチャー企業として設立された会社です。
研究支援事業・メディカル事業の2つの事業を支柱とし、多方面に事業を展開しています。
ライフサイエンス関連を主としているため、普段の生活の中ではなじみのない事業もあるのではないでしょうか。
リプロセルの事業にはどのようなものがあるのか、第2回はメディカル事業をご紹介いたします。(まだ第1回を読まれていない方はこちらから!)
研究支援事業では、長年の幹細胞研究から得た知見を活用し、様々な製品・サービスを提供しています。
臨床検査
臨床検査室は2005年に衛生検査所として登録して以来、臓器移植及び造血幹細胞移植で必要とされる、HLAタイピングや抗HLA抗体検査等の臨床検査サービスを実施してきました。医療機関からの受託や、検査機関からの再受託を受けており、これまでに全国300以上の施設との取引実績があります。
2021年3月からは、新型コロナウイルスPCR検査を新たに開始しました。現在、医療機関、法人、個人を対象として本検査を拡大しており、さらに、大手ECサイトであるAmazonや楽天市場でも、本検査の販売をしています。
また、インド子会社では、2021年、母体の血液から高精度に赤ちゃんの染色体異常を調べる無侵襲型出生前検査及び、がんの変異を調べ患者個人に最適な治療法を提供する、がんのコンパニオン診断サービスも行っています。
臨床用iPS
iPS細胞による再生医療の研究開発は世界中で精力的に行われており、日本でも、加齢黄斑変性、パーキンソン病、虚血性心筋症、脊髄損傷等の 臨床研究及び治験が進められています。再生医療に用いるiPS細胞には高い安全性と品質、さらに各国の医療ガイドラインに準じることが必要とされます。
安全性の高いiPS細胞を作製するためには、iPS細胞を作るプロセスである「リプログラミング」が重要になります。リプロセルでは遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクの低い最先端のRNAリプログラミング技術を開発・保有しており、臨床応用に最適なiPS細胞を作製することができます。
製薬企業向けとして、「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」、個人向けとして「パーソナルiPS」の二つを提供しています。
・ GMP-iPS
「GMP-iPS細胞マスターセルバンク」では、医薬品製造の規制であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準拠してiPS細胞を大量製造し、再生医療製品の出発材料として製薬企業等に提供しています。リプロセルのGMP-iPS細胞は、日米欧の3極の規制に準拠しているため、日米欧で幅広く使用することができます。
・ パーソナルiPS
「パーソナルiPS」は、将来の疾患に備え、個人のiPS細胞を作製・保管するサービスです。個人のiPS細胞をあらかじめ作製することで、治療までの期間を短縮でき、さらに免疫拒絶のリスクを最小化した移植治療を実現します。2022年10月には、株式会社JTB社と業務提携を開始し、国内だけでなく海外のお客様のパーソナルiPSも作成することができるようになりました。
再生医療等製品開発
・ ステムカイマル
ヒト細胞加工製品ステムカイマルは台湾のSteminent BiotherapeuticsInc.が開発した再生医療製品です。リプロセルは脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しています。
脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまうことにより、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルの投与により、症状の進行を抑制する効果が期待されています。
リプロセルは日本国内で第II相臨床試験を実施しており、2021年5月には予定通り全被験者への投与が完了しました。
・ 神経グリア細胞
米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で、iPS細胞を使った各種神経変性疾患に対する再生医療製品の研究開発を行っています。Qセラ社は中枢神経系の再生医療に特化したベンチャー企業であり、リプロセルとの間で合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」を設立しました。合弁会社では、当社のiPS細胞技術とQセラ社の中枢神経系の技術を組み合わせることで、iPS神経グリア細胞の開発を加速しています。