「生体試料」を提供するバイオバンク

バイオバンクは、「人体に由来する試料およびそれに関する情報を、医学・科学研究に利用するために、体系的に収集・保管・分配するシステム」と定義されることもあります(町野朔、辰井聡子共編「ヒト由来試料の研究利用」、上智大学出版、2009、p.3)。もう少し簡単な説明としては、研究者たちに「ヒトの組織や血液やDNAなど」を提供するための仕組みです。これらの生体試料を用いることで病気のメカニズムを早く発見したり、新しい治療法を開発できるようになると期待されています。

今回のコラムでは、バイオバンクが行っていることの一部を簡単に紹介します。

生体試料を集める

バイオバンクでは、厳格な倫理審査を経て、正式なインフォームドコンセントに則り、ドナーの同意を得た生体試料を集めています。日本国内で活動しているバイオバンクの多くは、特定の医療機関に付随している施設が多く、その医療機関で採取される生体試料の有効活用を目的としています。

米国にあるREPROCELL USAでは、米国内外の多くの医療機関と提携していて、多様な疾患の患者さんから得られる生体試料を保有しています。特にがんにおいては、通常の治療で手術が行われることから、摘出された組織片の一部が多く保管されています。近年は、コロナウイルス感染患者由来の血清等も採取されています。さらに、バイオバンクに保管されていない生体試料でも、医療機関とのネットワークを活用することで、求められる試料を集めることができます。

研究に適した生体試料を探して入手することは手間のかかる作業となりますが、バイオバンクを利用すれば、研究者は自身の研究や実験に集中することができます。

生体試料に付随する情報も重要

バイオバンクが提供する生体試料の価値は付随する情報によって、大きく変化します。バイオバンクはヒトの生体試料だけではなく、試料を提供したドナーの診療情報や、診療後の経過の情報なども集めます。

これらの情報により「集められた生体試料がどのような試料なのか」がわかります。

例えば研究者は、ある病気を発症した患者さんの試料を必要とします。診療情報があれば、どのような病気を持ち、どのような治療を受けたのかがわかるので「試料の素性」が明らかとなります。これにより研究者は、自分が求める「素性」を持つ試料を使うことができます。一般的に、ドナーの性別や年齢、体重等の基本情報だけでなく、既往歴や投薬歴、喫煙等の習慣の情報などが収集されています。

まとめ

バイオバンクでは、入手が難しいヒト生体試料だけでなく、その生体試料に紐づく情報を取り扱っています。これらの生体試料と情報は、今後さらに有効活用されることが見込まれていて、新たな治療薬や治療方法の開発を加速すると期待されています。

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バイオバンク : https://reprocell.co.jp/biobank

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