血漿(けっしょう)と血清(けっせい)の違い
健康診断を受けたり、病院に行ったときに採血検査を受けたことがある方は多くいると思います。 正常だったり基準値を外れていたりなど一喜一憂する採血結果ですが、いったい採血された血液のどの部分を診ているかご存じでしょうか。 多くの血液検査は血漿や血清と呼ばれる部分を使って調べています。
血漿と血清の一番の大きな違いは、「フィブリノゲンが含まれているかどうか」です。
血液ってなにで構成されている?
はじめに、血液はどんなものから構成されているか見てみましょう。
血液は赤血球や白血球などの血球成分の細胞と、血漿成分である細胞間液で構成されています。採取された血液を「全血」と呼ぶこともあります。
血漿とは
血漿とは、さまざまな物質を含む溶液のことで、血液の血球成分(赤血球、白血球、血小板など)以外の成分を指します。含まれる物質は、タンパク質、ブドウ糖、脂質、金属イオン、電解質、ホルモン、ビタミン、老廃物などさまざまです。体の各部位に栄養を運び、老廃物を運び出すはたらきをしています。
血漿の中でもっとも重要な成分は、アルブミン、免疫グロブリン、血液凝固因子などのタンパク質です。
- ・アルブミン:血液の浸透圧維持やいろいろな物資を運ぶ。
- ・免疫グロブリン:病原体などに抵抗して身体を感染症などから守る。
- ・血液凝固因子:出血を止めるために重要なタンパク質。
試験管に入れた血液を遠心分離すると、血球成分が底に沈み、血漿成分が上澄みとなります。血漿は血清とフィブリノゲンに分けられます。フィブリノゲンとは、血液凝固因子の一つで、血液を固める働きをするタンパク質です。
血漿が用いられる検査項目
血漿が用いられる検査項目は、血糖検査と凝固検査で、「抗凝固剤(血液が固まるのを防ぐ薬剤)」が含まれている採血管で採血します。 血糖検査は、血液中の血糖値やHbA1cを調べる検査です。凝固検査はPTやAPTTなど血液の凝固作用が正常かどうかを調べるために行います。
また近年増えている心不全など、心機能の検査に用いるBNPを調べる場合にも血漿を用います。
血清とは
血清は、血漿からフィブリノゲンを除いたものです。
血液を採血してそのまま放置すると、体内の止血機序と同じ作用が働くので、血液が固まって沈殿して上澄みと分かれます。その沈殿を「血餅」と呼び、上澄みを「血清」と呼びます。
血清が用いられる検査項目
血清からは非常に多くの項目を検査することができます。血清を調べる際には、「抗凝固剤」の含まれていない採血管で採血します。主に、Na・Kなどの電解質、コレステロール値などを調べる生化学検査、免疫検査に用いられます。
ほかには、HBV・HBCなどの感染症や腫瘍マーカー、甲状腺機能なども血清を用いて調べます。
生化学検査は血漿を用いて検査を行う医療機関もあります。
全血が用いられる検査項目
全血とは、その名の通り、採血されたすべての血液のことです。遠心分離などを行わずに体内の血液に近い状態を保ちます。全血を用いて検査を行うと、赤血球や白血球、血小板の大きさと数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値などを測定することができます。
検査したい内容によって、どの状態の血液を使って検査するかを選択します。
まとめ
血漿と血清の一番の違いは「フィブリノゲン」と呼ばれる血液凝固に関わるタンパク質を含んでいるかどうかです。血液検査では、どちらも使用されていますが、検査項目によっては、必要となる検体の種類が指定されています。
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