エクソソームとは|疾患(がん、心臓病、糖尿病)の治療に向けて

エクソソーム(Exosome: エキソソームとも呼ばれます)とは、細胞から放出される細胞外小胞の1種です。タンパク質、DNA、RNAなどの生体物質を運んでおり、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしています。 エクソソームの研究は近年急速に進展しており、エクソソームがさまざまな疾患に関与していることが示されています。これらの研究を通じて、新しい治療法の開発が期待されています。

エクソソームの構造と機能

 エクソソームは、直径30〜150nmほどの大きさで、細胞膜と同じ二重の脂質膜でできており、内包される物質は、タンパク質、核酸(DNA、RNA)等、多様です。タンパク質では、インテグリン、MHC、テトラスパニンといった膜タンパク質、ヒートショックプロテインや細胞骨格が含まれています。主な核酸としては、DNA、mRNA、miRNAが知られています。 これらの物質を搭載したエクソソームは細胞から分泌され、体液に乗って他の細胞に運ばれます。エクソソームが細胞に吸収され、エクソソーム中のタンパク質や核酸がその細胞内で働くことで、細胞に影響を与えます。

エクソソームの研究

 エクソソームの研究の進展に伴って、がんや心臓病、糖尿病など、さまざまな疾患への関与が示されています。そのため、エクソソームを利用した疾患の研究や治療法の開発が行われています。以下にその一例をご紹介します。

・がん(悪性腫瘍)

エクソソームは、がんの悪化や転移に関与する可能性が示されています。 2012年の研究では、マウスメラノーマ細胞株 B16F10 細胞由来のエクソソームにより、転移先の臓器でがん細胞が増殖しやすい環境を構築することが示唆されました。 一方で、がん細胞が出すエクソソームを利用して、がんの検出や研究、転移の抑制に活かす試みが行われています。また、エクソソームが決まった細胞に作用する性質を利用して、薬をエクソソームに入れて投与する治療法も試みられています。

・心臓病

心筋細胞はあまり細胞分裂をしないため、再性能が低い臓器だとされていますが、心筋細胞が出すわずかなエクソソームには、心臓の再生や炎症抑制、心筋を太くする働きがあることが発見されました。 アメリカの研究では、このエクソソームを増やして投与する治療法の研究が進んでおり、将来的には手術せずに心臓病を治すことを目標としています。

・糖尿病

糖尿病には、先天的な1型と後天的な2型の2種類があり、どちらもインスリンを生産する膵臓のβ細胞が減少することが報告されています。東北大学の研究では、骨髄の細胞が出すエクソソームに含まれるRNAには、再生能の低いβ細胞を増やし、インスリン分泌や血糖値を改善する働きがあることが発見されました。 このエクソソームの働きが、今後の糖尿病治療に役立てられると考えられています。

エクソソームの将来

エクソソームを使った技術はまだ発展途上ですが、新しい治療法や診断法の開発に大きく貢献することが期待されています。今後の研究によって、エクソソームのさらなる可能性が発見されることが期待されます。

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