【解説】神経細胞（ニューロン）と脳オルガノイドとは？
科学の世界には、まだまだ解明されていない謎がたくさんありますが、それらが多く残っているのが神経細胞や脳の分野だと思います。この謎を解明するために多くの研究が行われており、最近、オルガノイド（Organoid）を使用した研究が増えてきています。本コラムでは、神経・脳研究とオルガノイドについて紹介します。 神経細胞は、私たちの脳や神経系の基本的な構成要素で、その形状や機能は非常に多様です。神経細胞の大きな特徴は、電気的な信号を使ってコミュニケーションを行い、私たちの思考や感覚を可能にしていることです。脳内では、神経細胞同士やその他の細胞とも相互作用しながら、複雑なネットワークを形成しています。
オルガノイドは、細胞が集まって形成される細胞の塊で、幹細胞研究の進展とともに使用範囲が広がって気ました。生物の組織を模倣することを目的として、様々な組織（脳、肝臓、肺、腸管、腎臓など）を対象としたオルガノイドが作製されています。これらのオルガノイドは、実験室の中で作ることができ、使用領域としては、病態の解明、創薬支援、再生医療など幅広い応用が進んでいます。
脳を模倣するために作製されたオルガノイドは、「脳オルガノイド」と呼ばれることもあります。脳オルガノイドでは、１種類の神経細胞だけでなく、様々な神経系細胞が含まれています。このような脳オルガノイドを用いることで、平面培養では再現することができない、脳内での高度なネットワークを再現することを目指していて、脳の基礎的な理解や神経疾患の治療法の開発に役立てることが期待されています。
脳オルガノイドを活用した様々な研究の一つとして、MEAシステムを用いた電気生理学的な測定が行われています。MEAシステムは、簡便に神経活動を測定する装置で、神経細胞の活動やネットワークの形成を測定することができます。これにより、脳オルガノイド内の神経細胞の応答をリアルタイムで取得することが可能となります。さらにMEAシステムは、ハイスループットで経時的な測定ができるため、正確なデータを大量に得ることができ、脳や神経細胞の機能に関する理解を深めることができます。
オルガノイドは、複数の細胞から構成されることから、安定して作製することや、最適なオルガノイドを決めることが難しいことが課題です。また細胞の塊を測定することから、従来の測定方法がそのままで使用できない点も、改善の余地があります。しかしながら、脳オルガノイドは、私たちの脳と神経系の秘密を解き明かすための重要なツールとなると考えられています。今後は、脳オルガノイドの作製技術や、その研究手法が進化することで、疾患の治療法の開発や脳の複雑さの理解が進んでいくと思います。
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